76 こころをひらく

仕事で成功する

皆さんこんばんは角松利己です!

今回は、「教師は自己防衛に回ることなく、心を開くことで、欲しいものが手に入りますよ」という話をします。

アンビバレントな私

あなたは、普段、生徒とどのように接していますか?

多くの教師にとって、生徒との距離感をどのように保つかについては、意見が分かれるところだと思います。一定の距離を保ち、厳格な態度で接しようとする教師もいれば、可能な限り友好的な態度で友人のように接しようとする教師もいるでしょう。

私が教師になりたての頃は、昔ながらの、「生徒に言うことを聞かせたい教師」になろうとしていました。自身の拙い授業に集中させるために、ちょっとおしゃべりが聞こえれば注意したり、寝そうになっている生徒の頭を小突いたり、生徒の一挙手一投足に気を配っていました。と言うより、正確には、「見張っていた」と思います(嘆)。そして、そうすることで、自身の教師としての威厳を保とうとしていました。

一方で、そのように接することで、生徒と良好な関係が築けないことに物足りなさを感じてもいたのです。

心の中では、

「生徒が心を開いてくれるといいな。和気あいあいとした雰囲気の中で授業ができるといいな。」

と感じていました。

ここでの問題は、

「生徒が」心を開いてくれるといい。

と感じていた点です。つまり、「私自身が生徒に心を開く努力は棚上げしていた」わけです。

生徒の統制がとれなくなったら、自身の教師としての沽券にかかわる、プライドを保てない、そんな気持ちを優先していたため、とにかく、「生徒をコントロールできていること」といった目先の利益に目が向いていたのでしょう。

しかし、私の気持ちの奥底では、実は「生徒といい関係を築きたい」という思いがありました。

つまり、当時の私は、「教師としてのプライドを維持したい」という思いと、「生徒と良好な関係を築きたい」という思いがせめぎ合った結果、前者を優先させていたわけです。

自信のない教師

問題は、「私自身が」生徒に心を開けなかったことと、「教師としてのプライド」に重きを置きすぎていた点にあります。

自分の気持ちや価値観を吐露することが苦手だった私は、共感することが得意ではありません。たとえば、誰かが楽しそうにしていても、「何かいいことあった?」と、気軽に声をかけることができませんでした。

逆に、元気がなさそうな人を見た時は、「どうしたの? 何かあった?」と声をかけることができました。

これは笑える話ですが、おそらく声をかける「大義名分」があるケースについては、相手への働きかけができるのでしょう。それほど、自分に自信がなかったのだと思います。

そして、私のこのような傾向が、生徒に対する働きかけにも作用していたため、

ポジティブな共感を示すことができず、
自身の弱みも見せず、
教師としての役割に沿った時だけ働きかける、

そんな教師像につながっていたのだと思います。

自分にたどりつく

「教師としてのプライド」も、とても強いものでした。

私は、1968年生まれです。幼少時の私にとって、当時の学校の先生は、怖い存在でした。

小学生の頃は悪ふざけをして、担任の先生をよく怒らせていました。中学生になってもそれは変わらず、田舎の中学校に赴任してきた女性の先生を困らせてばかりいました。

その一方で、男性教師に対しては従順でした。優しい先生もいましたが、当時は生徒の悪い行いには体罰も辞さないという先生も数人いて、決まりを破ったときには頬を張られることもありました。授業中に居眠りをしていれば、教科書か出席簿で頭をたたかれる。それが当たり前でした。まだ学校教育が成立していた頃で、たたかれた生徒たちは、私を含めて「悪いことをした当然の罰だ。」と受け入れていました。

加えて、私の祖父母と父親が教師だったこともあり、教師という職業に権威と畏怖を感じていた私は、「先生とは怖い存在だ」という認識を持っていたのです。

少々語弊のある表現ですが、

「私も大人になったら、生徒から尊敬され、いい意味で怖がられるような教師になろう。」

そう思っていたのです。

同時に、「生徒は教師に従うべきだ。」との強い思いもありました。

このような思いと、私自身の性格が反映され、アンビバレントなせめぎ合いが私の心の中で繰り広げられた結果、教師としての私は多くの壁にぶつかることになっていったのです。

リアルな関係づくりには自己開示が必要

52歳の現在、私は若かった頃とは少しずつ変わってきています。授業では、私の過去の失敗談や高校生の頃の思い出などを折に触れて話します。一方で、「過去に出会った生徒とのエピソード」も、よく披露します。

高校生の心に響くのは、「失敗する教師の姿」や「リアルな師弟関係」などではないでしょうか。私は理想を語るのが好きですが、それと同じくらい、うまくいかなかったことや、大人が苦しんでいた過去を伝えることが、私たち教師と生徒との関係にリアリティを与えてくれるのではないだろうかと思っています。

そのような話を聞いた後の生徒の顔は、いつも少し大人びたように映ります。

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