58 自習監督をしながら生徒と信頼関係を結べてしまう方法

仕事で成功する

みなさんこんばんは角松利己です。ハンドルネームの由来は、こちら

教師は自習時間を、どう捉えてる?

あなたは自習監督を務めるときに、こんなことを考えたりしませんか?

「しーんと静まり返った中で生徒は取り組んでるけど、ちゃんとやってんのかな?」
「自習時間でも生徒に結果を求めることって、できないかな?」
「初めて顔を出すクラスだけど、せっかくの機会だから生徒のことを知りたいな」
「あのクラスは騒がしいって評判なんだよな。あんまり気乗りがしないな・・・」

自習監督に行った時の教師の振る舞いって、だいたい想像できますよね。自分は教壇の上で本でも読みながら、生徒の様子をぐるりと見まわす。生徒は個々に課題に取り組む(ことが理想的だと教師は思っている)。時折、おしゃべりが聞こえると「はい、そこ! 静かにね。」なーんて。

お決まりのパターンです。でも、つまらないですよね。

学校って「予定調和」の反復ですけど、自習監督のように、「超・予定調和」の時間になってくると、ホントに面白くありません。生徒も教師も、つまらないんです。

そこで、今回は

「ちょっとした仕掛けをするだけで、教師のあなたが生徒と仲良くなれますよ。おまけに生徒自身も達成感を味わえますよ。」

という方法についてお伝えします。

ちなみに、これからお伝えする方法は「高校生対象の場合」になります。でも、「中学生」でも全く問題ないと思います。指導困難校には特に有効ですが、進学校でも生徒のノリが良ければ使えます。ぜひ、お試しを。

事前準備

あなたが自習監督を務める日時やクラスについては、どんなに遅くても当日の朝には把握できると思います。そこで、「事前準備」として、

1.課題内容と対象人数を確認する。
2.課題達成にどれくらいの時間が必要かを予測する。

同教科を担当する同僚職員に尋ねてみるのもいいでしょう。ただ、私の場合、「ぱっ」と見た瞬間にいけそうな(終わらせられそうな)時間を自分で決めてしまいます。

3.早く終わるようなら、ネタを考えておく。

自習課題って、だいたいその時間内に終わりそうな分量が用意されているケースが多いものです。たまに「できなかった分は持ち帰り、家でやって後日提出!」なんてメモが添えられた大量の自習課題が出されることもありますが、ま、例外です。基本的には早く終わりますし、私の場合は意図的に早く終わらせて、信頼関係を作るための時間を取ります

4.タイマーを持参する。

教室の壁掛け時計ではなく、「ピッ!」と音の鳴るタイマーを持参すると、ちょっとした「非日常」感を作り出せます。私はamazonで700円程度のキッチンタイマーを購入して使っていますが、ある同僚は、とても高額の(1万円以上!)いわゆる教室のような広い空間で使う、本体も文字盤もとても大きなタイマーを使っています。工夫してますね。

自習監督時に限らず、タイマーは必須です。短時間に集中して考えさせるために、私は通常授業でも常に使っています。ダラダラ考えても結果は出ないですから。

生徒と交渉する

まず、「課題達成に必要な時間」を生徒に尋ねます。自習時間の最初に、

「この課題を終わらせるのに、どれくらい時間が必要かな? 君たちなら30分くらいでできると思うんだけど。」

なんて声を掛けます。ここでのポイントは、

・生徒をヨイショする。
・教師の側で、意図的に少しだけハードルを上げる。
・生徒自身に決めさせる。

の3点です。

まず、「君たちなら多少時間の制約を受けても達成できるはずだよ」という、教師の側の「期待感」を示します。そして、ちょっと高いハードルを示します。自習時間は目的を作ることが難しく、ぼんやりしがちになるので、クリアするための条件を課すわけです。たとえば、こちら側の「30分で終えられる」との提案に対して「40分」と生徒が答えたら、こちらは「35分」を提案する。

これは、生徒との「交渉」です。

学校という場は、通常、「教師が生徒に対してほぼ一方的に指示を出すことで予定調和を繰り返す場」なので(泣)、教師と交渉する機会を作ると、生徒は内心喜びます。交渉する機会を生徒に与えないのは、教師が生徒を恐れているからです。でも、「授業は一緒に作るもの」。それがたとえ自習時間であっても、です。

そして何より大切なのは、「生徒自身に決めさせる」ことです。よく言われることですが、人は誰かに命じられて素直に動ける生き物ではないですし、動いても途中であきらめてしまうものです。でも、「30分でやる!」と自分で決めれば、そのルールで自身を律するようになります。誰もが、自分に嘘はつきたくないですからね。

「交渉」は、「楽しく結果を出すためのプロセス」です。教師は「ゲーム」を楽しむように、生徒とやりとりをしてみるといいですね。

ちなみに、「交渉」についての私の考えは、こちら

教師が没頭する

1.この時間中に教師自身がやりたいことを「宣言」する。

私の場合ですが、自習監督の際は、普段同時進行で読んでいる本を5冊くらい持参して順番に読みながら、本から得られたヒントをメモするようにしています。自習監督時のように、静かな環境で集中して本が読めるようなときは、なかなかありません

メモする内容は、主に「学校環境の改善案」と「今書いている記事のヒントや目次」になりますが、出てくるアイディアをひたすらメモする時間は、現在の私にとっては、おそらく最も貴重な時間です。こうやって貯めたメモが、その後の私の思考や行動を規定していくので、自習監督の時間は私にとって、とっても嬉しくなる時間なんです(笑)。

そして、「宣言」はこんな風に行います。

「私はこの時間を、私にとって実りあるものにしたいと考えています。私はこの世の中の仕組みを知りたいと思っていますが、ほとんど知識がありません。だから、この時間は本を読んで、知識を増やしたいんです。集中したいので、協力してください。」

おそらく、多くのセンセイ方が「静かにね」という時は、生徒に向けた言葉なんでしょうが、私は違います。はっきりと「私は私の利益を最優先する」というメッセージを送るんです

生徒に伝える情報のほとんどは、「私の願望」です。この言葉は「私の心の底から出ている言葉」なんです。

「私は私を磨くためにできることに専念したい。願わくば、君たちも自分を磨くために、時間とエネルギーを使ってほしい。」

こんなメッセージを込めているんですね。

「自分自身にコストをかけよう」という考えを、常に持ってもらいたいんです。自分に力が備わっていないと、大切な時に、大切な人を助けてあげられないと思っているので。

次に、「ほとんど知識がありません」という言葉ですが、これは事実です(笑)。

ですが、「自分にはわからないことだらけだ」という事実を、教師が生徒に対して言葉で伝えること自体には価値があると思っています。「弱さを認め、周囲に伝える」ことは、生きやすさを考える上で、もっと必要になってくると思います。

「協力してください」と、はっきり言いましょう。

「この先生は、自分を磨くために私たちに協力してほしいと言っている。」

こんな風に生徒に感じてもらえれば、OKです。「成長するために協力してほしい」と言われれば、多くの人は支援の手を差し伸べます(ちょっと大げさですかね)。

2.生徒を見ない

「教師が没頭する」とは、「生徒に注意を払わない」に等しいことです。

ここは大切なところですが、生徒に注意を払ってはいけません。ここまでの前フリで、教室の雰囲気はかなりイイ線までいっています。しかし、自習が始まれば、かならずザワつく時がやってくる。その波は、自習終了時まで何度も繰り返されるものです。

そして、教師が一度でもそういった「ザワつき」に反応してしまうと、もう元には戻りません。あなたが反応した時点で、生徒に次のことが確実に伝わります。

「先生は、没頭なんかしていない。」

教師の側が最初に「自分のことに集中するから協力して」と言ったのであれば、少なくとも自分のことについては一貫性を持たなくてはならないのです。「自分のこと」とは「集中すること」であり、あなたがコントロールできることです。これに対して、「協力する」のは、生徒の側です。協力するかどうかは生徒の厚意の反映であって、あなたがコントロールできることではありません

もし、教室がザワつき始めた瞬間に、「そこ! 最初に先生に協力してって言ったでしょ」とでも言おうものなら、その「協力」は「強制されたもの」に変質します。つまり、「協力」ではなくなったわけです。

あなたは、多少のザワつきが見られたとしても、その都度反応してはいけない。おしゃべりは、しばらく続けばそのうち収まりますし、「やり遂げたい」という気持ちを持った大多数の生徒の雰囲気が、おしゃべりをしている生徒に浸透していくものです。

教師は待つことができないと務めるのが難しい職業ですよね。生徒自身の自浄作用を信じて、何よりもあなた自身が本当に没頭することです。「自習時間が終わるまでに、必ずこの知識をもとにアイディアを出すんだ」という意気込みで。

何かに打ち込んでいる人の邪魔って、なかなかできないものなんですよ。あなたはクールな表情で、たんたんと、欲しいものを手に入れるだけでいいんです。

生徒も教師も、結果を求める

1.教師自身が「結果」を求める

読書なら、何ページ読み進めたいのか?
どの本からどんなヒントを得たいと思っているのか?
そこで書き留めたアイディアをもとに、何にチャレンジしたいのか?

「あなたが」結果を出すことが、最優先です。「生徒が」結果を出すことは、その次です。

自習時間ですから、課題が終わればいい。それが生徒の収穫です。それ以上は求める必要がありません。しかし、あなた自身が結果を出さなければ、あなたにとって貴重なその自習時間は、意味がないのです。

あなたは生徒のロールモデルです。だから、まずあなた自身が「成功」することです

自習時間終了時に、あなたが小さな声で「よし!」とつぶやいて、満足した表情を浮かべるだけで、生徒は必ず感じます。

「ああ、こういうことか。先生は自分のやりたかったことをやって、欲しいものを手に入れたんだ」

と。

さらに、あなたが充実した時間を過ごすことで、次の自習監督が楽しみになります

2.生徒にも結果を求める

私は自分の授業でも自習監督時でも、基本的に「ペアワーク」か「グループワーク」で進めていきます。その方法論については他の記事に譲りますが、そのようにする理由は「早く結果が出るから」です。

課題達成に関するやりとりであれば、生徒の言動を制限することはありません。騒がしくなっても、内容がふさわしいものであれば、他の生徒への良い影響が期待できるからです。

ただ、1人で取り組んだ方が進む生徒も、もちろんいますよね。「結果最優先」を謳っているからには、手段は問いません。つまり、「自分にとってはかどるやり方」は、生徒自身に委ねます。1人でやった方が進むのか、友人同士で意見交換した方が進むのかについて考えさせ、選択させることが、「結果を出したい」という生徒の気持ちに応えることだと思います

残り時間の使い方

さあ、生徒たちはあなたの期待に応えて、予定よりもずっと短い時間で課題を達成したようです。彼らの顔を見てください。ちょっと誇らしい顔をしている気がしませんか?

この先は、あなたが生徒の期待に応える番です。

1.生徒が普段考えないような問題を提起する

私は高校生を相手にしているので、主に「人生設計」関連の問題を提起しています。「ライフ・シフト」的な感じですね。普段学校では教わらないような話を意図的にしています。この時間は、たとえ10分程度だとしても「教師自身の価値観を伝える、絶好の機会」です! 思い切り尖がった内容にしてみてください。見方を変えれば、あなたの価値観を強く訴求できると思えるからこそ、楽しく準備ができるんです。

素材は、本や新聞記事、メルマガなどです。生徒が真剣に向き合えそうな話題を持ち出し、楽しい雰囲気を作りながら伝えます。

2.必ずコメントをもらう

3分程度で読める資料とテーマを提示して、その感想を5分程度で書かせます。資料の説明は極力しません。不要なコストは一切省きます。そこは「自習時間」と割り切ってください。

仮に50分の授業時間に対して「30分で終わる」という言葉を引き出せたなら、残る20分のうち15分程度で終わりそうな課題(生徒が真剣に楽しめるもの)を事前に用意しておくといいでしょう。

私の場合、生徒がコメントを記入する際に、「伝える価値があると私が感じたコメントについては、他クラスで紹介します」とあらかじめ伝えておきます。実は、ちょっとした機会を捉えて生徒の価値観を相互に知ることは非常に重要です

学校では、生徒同士が一対一の関係で相手の内面に触れる機会がほとんど与えられていません。そして、生徒の関心事は、まさに「そのこと」なんです。自分の隣の「こいつ」が、普段はあまり話さない「こいつ」がどんな考えを持っているのか。自分の考えとどの程度同じでどの程度違うのか。これは、彼らにとっての懸案事項です。しかも、「価値観という内面」に踏み込んでいるため、一定の深さの心的交流が果たされることになります

このように、「シェアされる」という意識を生徒に持たせた上で、自由意見を書かせることが大切です。私は実際に、生徒の書いたコメントをいろんなクラスで紹介しています。具体的な生徒名とともにその生徒の価値観を伝えると、教室が水を打ったように静まります。そして同じ仲間の価値観を共有することで、自身の方向を修正したり、新たなチャレンジを始めようとする。それが、生徒です。

事後

自習終了時に、賞賛と感謝を伝えます。

・生徒自身が設定した課題取り組み時間にチャレンジしたことへの賞賛。
・教師の側の提案に乗ってくれたことに対する感謝。

この2点で十分です。

収穫

さて、いかがでしたか?

今回は、「自習監督って、意外といい時間になりそうだね」と感じてほしくて、このような記事を書きました。

あなたが自習監督を務める際には、「ちょっとした仕掛け」を用意してみるといいでしょう。そうすることで、その時間は生徒にとってもあなたにとっても、豊かなものになるはずです。

生徒を50分間、静かに机に向かわせる。

それでは、あまりにもつまらない。人生は、そのような作業で構成されてはいません。

自分の力を磨き続けることの大切さを
対話を通じた人間関係の作り方を
他人を思いやる配慮を
何よりも、生徒と教師、双方の「自己に対する信頼」を

手に入れることができるはずです。たとえ自習時間であったとしても。

学校という場では、生徒と教師の「小さな信頼関係」の構築と、その積み重ねがすべてです。

私が提案するのは、表面的な働きかけではなく、

「本質は何か?」
「ゴールをどこに設定しているか?」

こういった質問に対する回答をイメージした働きかけの大切さです。

あなたにとっての本質やゴールは何か?
あなたが取り組んでいる「小さな信頼構築のための試み」は何か?

よかったら、教えてくださいね。

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