33 家族を説得する方法は、原則が教えてくれた。

セカンドキャリアを構築する

ライフワークとの出会い

「人生を貫く指針が見つかった。私は、この考えをライフワークにしたい。」

48歳の時、『7つの習慣』に出会った私は、とても興奮していました。私が大切に思う価値観が、全編にわたって丁寧に書かれていたからです。

それまでの私は、教師生活を続ける中で、またさまざまなライフイベントに遭遇する中で、場当たり的な対応を続けていました。人生を貫く指針が私にはなかったため、人の意見に従ったり、よく考えずに自分なりの結論をごり押ししてしまったり。「この先もその時々の波に翻弄されながら生きていくのか」と思うと、明るい気持ちにはなれませんでした。

そのため、書店で同書に出会ったときは、言い知れぬ喜びに震えていました。
しかし、驚きはこの続きです。本を読み終えてひと月も経たないうちに、ネット上で、『7つの習慣』の個人向けファシリテーター養成講座の開講を知ったのです。当時の私には、講師として人に同書の理念を伝えることよりも、自分自身が人に教えられるようになるほどその理念を深く理解できる機会というものが、とても貴重に感じられました。

私は、「こんな機会は2度とないだろう。私が大切に思う価値観を根底から理解することで、私の人生を支える根幹が作られるはずだ。この機会を手放してはいけない。」と思い、養成講座の受講を決めました。

高いハードル

しかし、講座の受講料は私にとっては非常に高額でした。
1回2日間、計8日間の講座受講料は当時の私の月額給与に等しく、また、講習会場が都内だったため、そこまでの交通費や宿泊費を入れると、70万円ほどかかる計算になります。私名義の貯金から捻出するつもりでしたが、私がライフワークにしたいことであるとは言え、講習のたびに家を空けることになります。妻に言わないわけにはいかないだろうと思いました。

ただし、妻が同意してくれるかどうかは疑問でした。結婚していれば、ある程度の額の買い物は、相手に相談することが求められるでしょう。実際、妻自身が何かを購入する際は、それが数千円程度のものであっても、事前に相談がありました。

ただ、この養成講座は、私にとっては千載一遇のチャンスでした。この機会を見逃したら、きっと後悔する。残る30年ほどの人生を方向づける指針が、どうしても必要だったのだと思います。

私は、妻に「YES」と言ってもらうための作戦を考えました(笑)。
結婚後に家族名義で使う口座を作っていたので、

・「俺の貯金で払うから」の一言で押し切ろうか。
・でも、4か月で4回、泊りがけで都内に出向かなければならない、
それを正当化する理由をどうしようか。
・同じことを妻がやりたいといった場合、私は快く背中を押してやることができるだろうか。
・中身の見えない講習に数十万円を支払うことの妥当性をどう説明するか。

私は考え始めてから3日後に、行き詰まってしまいました。

相手のやり方に倣ってみる

日数が経つうちに、講座への申込期限も迫ってきます。
そんな時、私はそれまで妻から受けた相談のことを思い返していました。

妻は前述したように、小口の買い物についても事前にその必要性をその都度私に説明しようとするタイプでした。仮に私の気が乗らなくても、すでに購入する意思は妻の方で決まっているため(笑)、「NO」と言う選択肢は私にはないのですが、それでも必要な理由を添えて、「いいかな?」と伝えてきます。少し大きな買い物の場合には、毎日、折に触れて「購入したい」旨を伝えてきます。穏やかに、優しい声で、何度でも(笑)。

行き詰まってしまった私は、「そうだ。妻のようにやってみよう。自分と同じやり方でアプローチしてきた相手に対しては、聞く耳を持ってくれるだろう」と、方針を決めました。

私はその日、口火を切りました。
案の定ですが、妻は言下に否定こそしないものの、「それ、何の役に立つの?」「それだけのお金があれば、あれもできるしこれもできるよね」と畳みかけてきます。そんな時私は、「そうだよね」と一度言葉を引き取ったうえで、そのことについて話すのをやめます。しかし、翌日にはまた同じ話をします。この繰り返しです。

2週間くらい続けた頃でした。
ある日、妻の方から「いいよ」の一言が!
確認する私に対して「あなたがどうしてもやりたいことなんでしょ?」との返答でした。

そうです。養成講座への参加は私にとって

「どうしてもやりたいこと」、
「やらなかったら、きっと後悔するに違いないこと」でした。

最後は、原則だった

私には、妻を説得するうまい方法がありませんでした。だから、説得を捨てたのです

人は価値観が違って当たり前。夫婦だからと言ってごり押ししたら、いつか必ず大きな波になって返ってくる。だったら、それでも自分の人生にとって大切に思うことは、時間をかけて、穏やかに、そして真摯に伝えなければならない。

ただし、仮に上記のように誠実に伝えても、常に「結果」が手に入るとは限りません。
『7つの習慣』に書いてある通りです。

「私たちはプロセスは選べるが、結果は選べない。」

しかし、多くの人はその「プロセス」さえも、適切に選び取ってはいません。
だからせめて、私たちにできることは「プロセス」を丁寧に行うことでしかないのです。

こうして私は、
仕事を成功させるための、同時に仕事から離れるための指針を手に入れることに、成功したのです。

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